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手術


赤ちゃんを出す掻爬手術をした。
朝から飲まず食わずで病院に行く。まず子宮の入り口を
広げる処置。これが結構痛い。次に、身体に栄養を送る
点滴。太い針を深く刺すのでこれも痛い。皮膚が針の形に
盛り上がるので、自分の腕を見るだけでげんなりする。
でも、赤ちゃんはもっと痛いのかな、と思う。きっと痛いとか
思わないのだろうけど。

処置してからおよそ4時間後、肩に筋肉注射をして手術室へ。
この筋肉注射も痛いだろうとおびえていたのだが、看護士さん
の腕が良かったのだろう。痛くなかった。

キャスターの付いた小さなベッドに乗せられ、運ばれながら
「まな板の上の鯉」ということばが頭をよぎる。

手術室に入り、青っぽい服を着た人たちに囲まれると、
たまらなく不安になり、泣き出しそうになる。そんな時、
担当医師が私の顔を覗き込み、挨拶をしてにっこりと笑顔。
それだけでリラックスした。医者って偉大だと思った。

血圧計や心電図を付け、身体をがんじがらめにされる。
はやく麻酔で私の意識を無くしてくれ!と心の中で叫ぶ。

私の心の願いが通じたのか、ようやく麻酔。
麻酔医が私の横に立ち、ひとーつ、ふたつ、と数を数え
はじめた。私も声に出してひとーつ、ふたつ、と数える。
10を数えても意識ははっきりしている。
なんだか勝った気持ちでいたら、10と3くらいから急激に
ろれつが回らなくなり、15めで完全にアウト。

と、お腹が痛くて目が覚めた。舌が回らないが、なんとか
「ぃた~ぃ」 と訴えると、「もうすぐ終わりますよ!」と
すばやい反応。でもまだ痛い。ぃたぃ~とまた言う。

気づくと、痛くなくなっていた。すると急激に悲しみが
襲ってきて、「あかちゃ~ん」 と泣き始めた。看護士さんが
ティッシュをくれる。

医師が私の名前を連呼。何とか目を開け、医師の顔を見て
回らない口でお礼を言う。

キャスターつきベッドで運ばれている間も、意識が切れ切れ
に戻るたび、「あかちゃ~ん」 と泣く。今考えると、まるで私が
赤ちゃんのようだ。

病室のベッドに戻され、夫の声を聞き、意識が戻ってくるに
つれ、激しく泣く。
麻酔がだいぶん切れて頭がはっきりしてくると、いい加減
みっともないことに気づき、泣き止む。だが、泣きすぎて
すでに瞼はパンパンに腫れている。一時間くらい泣いていた
模様。

たっぷり泣いたお陰で、かなり気が晴れた。というのは変だが、
赤ちゃんとはもうお別れしたんだと実感し、再スタートしようと
いう気持ちがでてきた気がする。

そんな時、看護士さんがやってきて私の顔を見、

「大丈夫ですよ。また半年後には妊娠できますから」

その一言でまたわぁっと涙が出てくる。

「本当ですか?」

「うん。だから、今日はよくがんばりました!」

笑いながら、ありがとうございますと、泣いた。