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『落日燃ゆ』


城山三郎 『落日燃ゆ』 を読んだ。

東京裁判でA級戦犯として絞首刑に処された広田弘毅の
半生を描いた小説。

前半はややだれた感じだが、盧溝橋事件のあたりから
それまでの伏線が絡み合いつつ話が展開していき、
引き込まれる。

主人公の広田弘毅は、外交官としてまた首相として、一貫して
日本の平和維持のために全力を尽くすも、軍部の暴走を阻止
できない。
そして日本は日中戦争、更に太平洋戦争へとひた走っていく。
軍部が暴走していく箇所の記述は詳細で、読みながら当事者の
ように歯がゆい思いをする。

この作者は、地位や名声を追求しない清廉な人物が好きらしく、
広田弘毅を 「自ら計らわぬ」 「物来順応」 の人物として何度も
賞賛する。先日読んだ 『官僚達の夏』 の主人公、風越の
人物像とかなり似ている。

主人公の性格があまりに潔癖だと、ヒネている私は何だか
嘘くさい印象を持ってしまう。

私にとって、主人公の描き方に難はあったものの、それを
含めても実に面白い小説だった。