上海の高級ホテルにて


上海の料理は、北京の料理より数段おいしい。
上海滞在中は、ホテルの裏にある中華料理店に毎晩通った。
ただ、最終日だけはホテル内のレストランに入った。
疲れがたまっていたし、中国人の多い店の中で、大声で
注文するのが億劫だったのである。

レストランに入ろうとすると、化粧気の無いウエイトレスの小姐が
立ちふさがり、なんやかんやと囁いてくる。
よく聞くと「西餐(西洋料理)」だとかなんとか呟いている。
あとは上海方言で聞き取れないが、どうやら
「ここは西洋料理のレストランだが、あなた達、それでもいいの?」
と確認しているようだ。なんじゃらほい。
適当に「没問題(問題ないですよ)」 と答えて中に入り、席に着いた。

レストランには西洋人ひとりしか客がおらず、非常に静かだった。
我々の話し声しかしない。中国にもこんな静かなところがあるとは
知らなかった、と喜んでいたら、さっきの陰気な感じの小姐が
つんとすましてメニューを持ってきた。

一見して、値段のバカ高いのに驚いた。しかし、もう座って
しまったものは仕方がない。
60元のオニオンスープと、100元くらいの魚料理を人数分
たのんだ。そしてふと、「ごはんありますか?」と陰気な小姐に
尋ねたところ、ヤツは首を傾げ、眉間にしわを寄せ、なにか
とんでもないことを耳にしたかのような、極めてわざとらしい表情
を作ってこう答えやがった。

「ガァ?」

そして、あきらかに私をバカにした表情で、
「ここは西餐を出すところですから、ごはんはありません」
ときた。そこで私は腹の立つのを抑え、強いて笑顔で
「じゃあ、パンを2人分お願いします」 とお願いした。

我々の宿泊していたホテルは上海でもかなり有名なホテルで、
外国人客が非常に多い。だから、西洋料理も当然日本で食べる
のと同レベルか、それ以上のものが出てくるだろうと思って待って
いた。

スープがきた。茶色い。
先生と二人、黙って飲んだ。 「奥の方に座っている白人、何を
注文したんだろうなあ。彼も辛そうだ」 と先生がぽつり。
魚料理がきた。どうやらグラタンのようだ。表面に厚い白い膜が
かかってある。
おそるおそるスプーンですくって食べてみると・・・。
なま暖かい魚にぬるいクリームソースがかかっているだけだった。
しかも、魚が水っぽい。さらに、魚以外のものが何も入っていない。
純粋に魚とクリームソースだけなのである。外観はグラタンだが、
中にマカロニなどは一片も入っていない。

先生は、塩を隣のテーブルから持ってきて振りかけている。
私もまねて塩やらこしょうやらをひたすら振りかけた。
それでも途中で気持ち悪くなり、えづきそうになった。

「あの白人が陰気な顔をして食べている理由が分かった」と先生。
本当に、とんでもない料理だった。病気でもないのに、食事を
していて吐きそうになるとは。初めての体験だった。
まずいとか、そういう領域を超えた料理だった。
あの気取った小姐も、コックも、みんな自分でこの料理を食べて
みやがれと陰惨な気持ちになった。

レストランを出た後、「さ、久保、口直しに行くぞ!」 と、颯爽と
歩き始めた先生に、私は 「はいっ!」 と元気よく返事し、
いつもの中華料理店に向かったのであった。
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by jiubao | 2004-09-10 14:50 | 雑記