ニラ小姐


仙台から北京に行く際、大連でトランジットした。

大連空港で一旦飛行機から降り、一時間ほど後にまた
搭乗しなおしたのだ。

座席に座り、シートベルトを締めてくつろいでいると、
ショッキングピンクのズボンをはき、これまたショッキング
ピンクの布カバンを提げた小姐が、お尻を振りながら通路を
歩いてやってきた。
その出で立ちもさることながら、私を最も驚愕させたのは、
その小姐の放っていた臭いである。

ニラのにおいが全身から漂っている。
いったいどれだけのニラを食べればこんな強烈な臭いが
発せられるというのだろうか。

ニラ小姐はあろうことか私のとなりに座った。
この時ほど自分の運命を呪ったことがあろうか。
中国にいる間は結構あった。

さてこのニラ小姐、一応自分の口臭を気にしているらしく、
ガムをクッチャクッチャ噛んでいる。
だがそれは逆効果で、臭さを軽減するどころか、ミントの香り
とニラの臭いが相俟って、ものすごい激臭となって機内に
充満している。
そもそも、ガムを噛んだところでどうかなるレベルの臭いでも
ないのだ。小姐の全身からニラの臭いが放たれているのだから。

ここから北京までの一時間あまり、この激臭に耐えねばならない
というのか・・・。
私は果てしなく憂鬱な気分になり。がっくりとうなだれてしまった。

しばらく激臭に耐えていると、小姐、トイレに立った。
嬉しい。わずかな間ではあるが、あの激臭から離れることが
できて本当に嬉しい。
コマーシャルで、白人女性が飛行機のトイレでシャンプーし、
リフレッシュするというのがあったが、あの小姐には、シャンプー
どころか、全身をくまなく洗ってきてほしい。歯も磨いてきてほしい。
というか、着陸の瞬間までトイレから出てこなくていい、と
ありとあらゆる願望が一瞬のうちに胸中を去来した。

小姐、私の願望を容れてくれたのか、なかなか戻ってこない。
その間に、軽食が配られた。サンドイッチである。
気分もうきうきと、そのサンドイッチにかぶりついた。

ん?臭い。
そういえば、中国のパンは日本のパンとは異なる、独特の臭いが
あるのだった。ちなみにハムも独特の臭いがする。
ややテンションが下がりつつも、気を取り直してサンドイッチを
ほおばっていた。このサンドイッチ、ぱさぱさしているので、いくら
噛んでも飲み込めない。のどが渇く。

サンドイッチと格闘していると、小姐が戻ってきた。
ニラの激臭がパンの臭いを一瞬にして凌駕した。
なんだかもう哀しいような恨めしいような気持ちになり、俯いて
ひたすらパンを咀嚼しては無理矢理飲み込んだ。

戦時下の兵卒なら、こういう状況でも、こういうサンドイッチでも、
おいしいと思って食べるんだろうなあ・・・。
と、なぜかそんなことばかり考えていた。
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by jiubao | 2004-09-03 11:57 | 雑記